「自然と対話をし、小鳥のさえずりを聞きながら、緑のなかで静かに物を創っていきたい」と設けた伊豆高原のアトリエに、早春のある日、ジュンコ人見さんを訪ね、お話を伺いました。
粘土細工の花にセラミックの液体を塗ったものを「陶花」と呼ぶことがありますが、私の目にはそれは「イミテーション」としか映らないのです。いつか本物の土と格闘し、今までに得た技術を駆使して「真の陶花」を創ってみたいと思いつづけていて、3年ほど前からチャレンジを始めました。
花の型を造り、時間をかけて焼きしめる。10時間冷やして釉薬を塗り、また10時間あまり炎のなかで焼く。再び10時間冷ますという作業の連続で、気の遠くなるような時間が流れます。窯のふたを開ける時のドキドキ感を味わえることは大きな魅力ですが、どんなに愛情と技を込めても、失望感を味わうことも少なくありません。
パンド(パン粘土)や他のクレイの花と違い、焼き上がる瞬間までどのように咲くかは「神のみぞ知る」でまさしく神秘の花と言えますね。
「香りの花せっけん / ルナブランカ」は、安らぎや癒しが求められる現代に、創り手も贈られる人も癒されるようにと、ハーブの香りの「せっけんねんど」で創る優しく透明感のある花として発表しました。 この花を制作していると、肩の力が抜けてゆっくりと癒されている自分に気づきます。こんな時代だからこそ、多くの人々に触れてほしいと願っている「癒しの花」なのです。
私の「創造の花」に惹かれ集まってくださった多くの人々とともに、この道を歩み、「花を創る」ことで夢を紡ぎ、そして自ずから人がつくられてゆく姿を目の当たりにしてきました。この「花創り、夢創り、人づくり」が、長い間、私が花を創りつづけてこられた大きなテーマであり、原動力であるのです。 失敗を恐れず、「花を創り、夢を創り、人をつくって行く道」を、今後とも歩みつづけていきたいと思っています。